プチブリッジ(Petit Bridge)
<はじめに>
(このゲームは、ぼくによる、「コントラクトブリッジ」の3人バージョンの一つの提案ですが、コントラクトブリッジを知らずとも、お読みいただけます。表記法や、トリックテイキングゲームについては、以下のリンク先も、合わせてご活用ください)。◆
<前置き>
(以下、JCBLへのリンクまで前置きです。お急ぎの方、コントラクトブリッジをご存知の方は、飛ばしていただいて結構です・・・)
「コントラクトブリッジ(Contract Bridge)」というゲームがあります。公式ルールや大会があり、世界では、チェスなどと並び称されるマインドスポーツとして名を馳せているゲームです。
基本的なルール自体は、「ホイスト(Whist)」(18世紀半ばから20世紀はじめまで、イギリスで栄華を極めた、ルール自体はとても単純なトリックテイキングゲームです。礼儀作法などが複雑だったようですが。敢えて簡単にご紹介いたしますと、「2対2に分かれて、適当に切り札を決めて、トリックテイキングをする」というゲームです)の系譜にある2対2の比較的単純なトリックテイキングゲームです。
加えて、トリックテイキングの前に、自分チームが何トリック取るつもりかを宣言する「ビッド(bid)」を行い(これは競り形式で、相手側のビッドを受けて更に大きなビッドをしたりもします)、より実現の難しい約束(contract)をしたチームがオフェンス、反対チームがディフェンスとなって、その上でトリックテイキングを行います。特徴としては、
(1)スコア方式が洗練されている。
(2)オフェンス側の一人は、最初のトリックがリードされたと同時に手札を公開し、以後、パートナーの言う通りにプレイをする(自分の意思ではプレイしないこのプレイヤーを「ダミー(dummy)」と呼びます)。
(3)ビッドの際に、ビッドの内容に情報を載せてパートナーと情報交換することが認められている(つまり、予めパートナーと「暗号」を組んでおいて、ビッドをしながら互いの手札をある程度教え合えるわけです。ただし、普通は、この「暗号」は相手チームにも明示した上で使います)。
といった点が挙げられるでしょう。とても面白いゲームなのですが、ぼく的には、
・「いちいちビッドの暗号を憶えるのが大変だ」というのと、
・「『ダミーの人暇じゃん!』と多くの方が思われるだろうな」というのと(実際は、見ているだけでも考えることはいっぱいあってとても面白いですよ)
が、難点に感じられます。それに、コントラクトブリッジについては、既にこれでもかというくらい入門書や解説サイトが存在するので、本サイトでは詳述はいたしません。ご興味がございましたらば!例えば以下のサイトなど、ご覧になってみてはいかがでしょうか?◆
さて、大変長い前置きになってしまいましたが、上のJCBLのサイトには、実は、コントラクトブリッジの入門バージョン「ミニブリッジ」が紹介されています。
これはごく簡単に言えば、コントラクトブリッジからビッドのルールを取り除いたものになっています。さらにこれに手を加えた上で3人バージョンにしたのが、このページでご紹介させていただく「プチブリッジ」です(ダミーとしてプレイする人がいなくなる!やった!)。オフェンスを決める手続きが若干煩雑ですが、これによって、オフェンスサイドの手札の強さに多様性が生まれています。
ではここから、ゲームを紹介してまいりますね。
<人数>
3人(個人戦です)。◆
<使用パック>
スタンダードパック×1
◆
<カードの扱い>
トリックテイキングゲームで、後述のオフェンスの判断如何で、切り札が生じ得ます。
カードのランクは、A>K>Q>J>10>9>...>2の順に高いとします。
また、勝敗には関係無いのですが、絵札に「ウィナーポイント」があって、オフェンスを決める際に用います。Aに4、Kに3、Qに2、Jに1ウィナーポイントずつあって、マーク4種類分で計((4+3+2+1)×4=)40ウィナーポイントあります。◆
<勝利条件>
ゲーム終了時点で最高点を獲得していること。◆
<魅力>
コントラクトブリッジのトリックプレイ部分のエッセンスを味わえます。ダミーがあることによって、全カード中の半分の配置を知った上で、トリックテイキングに臨めるということですね。自分にとって隠れているカードは残り二人の手札だけですから、この二人の行動から、非常に多くのことを推論できます。
例えば、「きゃつは今スペードが無いから、残りのスペードは全部もう一人が持っているな」といった具合にです。結果、多くの部分、理詰めで勝利に近づくことができます(もちろん運も大事ですが)。
加えて、最初に「ウィナーポイントの公開」があるので、それも情報として活用できます。
例えば、「きゃつのウィナーポイントは全部で5ポイントで、今きゃつはKを出したから、きゃつの残りの絵札は(5-3=2)で、J2枚か、Q1枚だな。ん?私の手札にはJが3枚あるぞ?じゃあ、きゃつの手札にある絵札はQ1枚だけか。」といった風にですね。
それと、ダミーになる人がいません^^;(これって、友達と遊ぶ時に結構大事なんですよね)。それに、「3人だけなのにブリッジが出来る」というのも、嬉しくないですか?◆
<ざっくりとした流れ>
手札を4人分配ります(余った1人分は後々ダミーになります。「ダミー」について気になる方は、お手数ですが、上述の<前置き>(2)をご覧ください)。最初、ダミーの手札は伏せておきます。手札の強さに応じて、必要なら手札の入れ替えをした上で、オフェンス1人とディフェンス2人に分けて、残り1人分の手札をダミーとして公開します。
オフェンスは、このダミーと自分の手札を使って戦うことになります(なお、オフェンスサイドの合計ウィナーポイントは、常にディフェンスサイドの合計ウィナーポイント以上です)。
まず、2つの手札を見て、「コントラクト」をします。すなわち、切り札の種類と、自分がどれくらい勝つ予定かを宣言します。
後は、このコントラクトに基づいてトリックテイキングを行い、最終的な成果に応じて、オフェンスもしくはディフェンス側に得点が生じます。
これを何セットも行って、各自の得点を累積していきます。
困難なコントラクトを達成すると、「1ゲーム」取ることができます。「2ゲーム」以上取ったプレイヤーは、任意にゲームを終了できます。最高得点のプレイヤーが勝利します。ただし、「1ゲーム」取ったプレイヤーは、「バルネラブル(Vulnerable. 略して『バル』)」というアップダウンの激しい状態になって、ボーナスも罰点も規模が大きくなります。これに対して、まだ「1ゲーム」取っていないプレイヤーは「ノンバルネラブル(略して『ノンバル』)状態にある」と表現します。◆
<ルール>
(0)円形に座ります。ここまでで「オフェンス候補」になった回数が一番少ないプレイヤーが、「オフェンス候補」になります(該当者が複数いる場合は、ランダムに決めます。最初の2ゲームは、必ずランダムに選ぶことになります)。◇
(1)13枚ずつ、4人分の手札を配ります。1人分は、「ダミー候補」として残して、各自1人分を受け取ります。◇
(2)各自、自分の手札のウィナーポイントを数え、公表します。全員が公表すると、その合計を全ウィナーポイント40から引くことで、「ダミー候補」のウィナーポイントも分かります(下記例1もご参照ください)。
例1)各人の手札が以下の様だったとすると・・・
プレイヤー1「スペード:10,9,3、ハート:10,9,7,3,2、ダイア:7,4、クラブ:K,7,6」
プレイヤー2「スペード:K,7,6,4、ハート:A,J、ダイア:10,8,5、クラブ:Q,J,5,2」
プレイヤー3「スペード:A,Q,8,5,2、ハート:K,6、ダイア:Q,J,9,6、クラブ:10,8」
ウィナーポイントは、プレイヤー1が(K1枚で)3ポイント、プレイヤー2が(3+4+1+2+1=)11ポイント、プレイヤー3が(4+2+3+2+1=)12ポイントです。ここから、「ダミー候補」のウィナーポイントは、(40-3-11-12=)14ポイントだと分かります。実際、「ダミー候補」の手札は
「スペード:J、ハート:Q,8,5,4、ダイア:A,K,3,2、クラブ:A,9,4,3」
で、帳尻が合います。
◇
(3)(2)の結果を基に、以下の要領でオフェンスを決めます(やや煩雑なので、下記例2もご参照ください)。
*1:「オフェンス候補」と「ダミー候補」のウィナーポイントが足して20以上の場合、「オフェンス候補」がそのままオフェンスに、「ダミー候補」がそのままダミーになります。
*2:*1に該当しない場合、まずは「ダミー候補」を強くすることを考えます。
「オフェンス候補」以外で、「オフェンス候補」とのウィナーポイントの合計が20以上になるプレイヤーがいれば、そのプレイヤーの手札を新たな「ダミー候補」とし、古い「ダミー候補」の手札と交換します(該当するプレイヤーが2人の場合は、ランダムに1人選びます)。
この上で、「オフェンス候補」はオフェンスとなり、新たな「ダミー候補」がダミーとなります(明らかに、オフェンスとダミーのウィナーポイントの合計は20以上です)。
*3:*1にも*2にも該当しない場合(どうしようもなく「オフェンス候補」が弱い場合)、残念ながら「オフェンス候補」はオフェンスになれません。
「オフェンス候補」以外の2人のうち、「オフェンス候補」になった回数がより少ないプレイヤーがオフェンスとなり(同数の場合はランダムに決めます)、「ダミー候補」はそのままダミーとなります(この二者のウィナーポイントの合計は必ず21以上になります。というのも、*2に該当しないので、元「オフェンス候補」を含む残りの二人のウィナーポイント合計が19以下だからです)。
例2)ウィナーポイントが以下のようになっている場合。
プレイヤー1(オフェンス候補):12
ダミー候補 :13
プレイヤー2 :3
プレイヤー3 :12
オフェンス候補とダミー候補のウィナーポイント合計が(12+13=)25で、20以上なので、このまま、プレイヤー1がオフェンス、ダミー候補がダミーとなります。
例3)ウィナーポイントが以下のようになっている場合。
プレイヤー1(オフェンス候補):12
ダミー候補 :7
プレイヤー2 :8
プレイヤー3 :13
オフェンス候補とダミー候補のウィナーポイント合計が(12+ 7=)19で、20未満です。しかし、プレイヤー2やプレイヤー3の手札をダミー候補とすれば、これは(12+8=)20や(12+13=)25となって、20以上になります。というわけで、プレイヤー2、3のどちらかをランダムに選び、そのプレイヤーの手札をダミー候補の手札と入れ替えます。例えば、プレイヤー3が選ばれたとしましょう。すると、ウィナーポイントは以下のようになります。
プレイヤー1(オフェンス候補):12
新ダミー候補 :13
プレイヤー2 :8
プレイヤー3 :7
このまま、プレイヤー1がオフェンス、新ダミー候補がダミーとなります。
例4)ウィナーポイントが以下のようになっている場合。
プレイヤー1(オフェンス候補):12
ダミー候補 :7
プレイヤー2 :6
プレイヤー3 :15
オフェンス候補とダミー候補のウィナーポイント合計が(12+ 7=)19で、20未満です。また、プレイヤー2の手札をダミー候補としても、(12+6=)18で、やはり20未満です。しかし、プレイヤー3の手札をダミー候補とすれば、これは(12+15=)27となって、20以上になります。というわけで、プレイヤー3の手札をダミー候補の手札と入れ替えます。すると、ウィナーポイントは以下のようになります。
プレイヤー1(オフェンス候補):12
新ダミー候補 :15
プレイヤー2 :6
プレイヤー3 :7
このまま、プレイヤー1がオフェンス、新ダミー候補がダミーとなります。
例5)ウィナーポイントが以下のようになっている場合。
プレイヤー1(オフェンス候補):7
ダミー候補 :12
プレイヤー2 :10
プレイヤー3 :11
オフェンス候補とダミー候補のウィナーポイント合計が(7+12=)19で、20未満です。また、プレイヤー2、3の手札をダミー候補としても、これは(7+10=)17、(7+11=)18にしかならず、やはり20未満です。従って、プレイヤー1はオフェンス候補から外され、プレイヤー2、3のうち、オフェンス候補になったことの少ない方が新たなオフェンス候補となります(同数の場合はランダムに決めます)。例えばプレイヤー2に決まったとしましょう。すると、様子は下のように変わります。
プレイヤー1 :7
ダミー候補 :12
プレイヤー2(オフェンス候補):10
プレイヤー3 :11
このまま、プレイヤー2がオフェンス、ダミー候補がダミーとなります(二者のウィナーポイントの合計が20以上になっていることにご注意ください)。
◇
(4)オフェンスが決まったら、ダミーの手札を、ディフェンス側の二人の間に表向きで分かりやすく置きます(ダミーは、あたかもディフェンス側の二人の間にいるもう一人のオフェンスとして扱います)。◇
(5)オフェンスは、切り札の種類と、どれくらい勝つかを約束(コントラクト)する義務があります。自分とダミーの手札を見て、まず「好みの切り札の種類」(選択肢は、スペード、ハート、ダイア、クラブ、ノートランプ(切り札無し)の5種類)を宣言します。その上で、以下の4つのいずれかを宣言します(なお、コントラクトブリッジの「ダブル」「リダブル」はここでは採用しません)。
・「パーシャル(partial)」(「過半数の7トリック以上を取ります。大勝ちはできなさそうです。」という約束)
・「ゲーム」(「大勝ちします。つまり、後述の『トリック点』で100点以上稼ぎます。」という宣言です。具体的には、切り札がクラブorダイアなら11トリック以上、スペードorハートなら10トリック以上、ノートランプなら9トリック以上取る、という約束です))
・「スモール・スラム(small slam)」(「12トリック以上取ります。」という約束)
・「グランド・スラム(grand slam)」(「13トリック全て取ります。」という約束)
◇
(6)宣言された切り札のもとで、トリックテイキングを行います。最初のトリックのリードは、オフェンスの左隣が行います。プレイは時計回りです。ダミーの番が来たら、オフェンスのプレイヤーが、ダミーの位置のプレイヤーとしてプレイします(ダミーの手札は、ゲーム中、常に公開されることにご注意ください)。◇
(7)13トリックが全て終了したら、各チームの獲得トリック数を数えます。オフェンスがコントラクトを達成した場合は、コントラクトと成果の内容に応じてオフェンス1人が得点します。達成しなかった場合は、ディフェンス2人が公平に得点します。得点システムは、ほぼデュプリケートブリッジ(大会用のブリッジ)に倣います(「ダブル」「リダブル」はありませんが)。具体的には、下記のとおりです。
〜オフェンスが得点する場合〜
(トリック点)+(コントラクトボーナス)
を得点します。
「トリック点」は、切り札の種類と、6トリックを超えて獲得したトリック(「メイク(make)」と呼びます)の数に依存して、以下のように決まります。
ダイアorクラブ :(20点)×(メイク数)
スペードorハート:(30点)×(メイク数)
ノートランプ :(30点)×(メイク数)+(10点)
「コントラクトボーナス」は、(5)のコントラクトと、オフェンスの「バル」「ノンバル」に応じて以下のように決まります。
パーシャル :50点(ノンバル)、50点(バル)
ゲーム :300点(ノンバル)、500点(バル)
スモールスラム:800点(ノンバル)、1250点(バル)
グランドスラム:1300点(ノンバル)、2000点(バル)
◎
〜ディフェンスが得点する場合〜
オフェンスがコントラクト達成に不足しているトリック数(「ダウン」と呼びます)と、オフェンスの「バル」「ノンバル」に応じて決まります。
オフェンスが「ノンバル」のとき:(50点)×(ダウン)
オフェンスが「バル」のとき :(100点)×(ダウン)
以上の点数を、ディフェンス側のプレイヤーそれぞれが獲得します。◎
◇
(8)「パーシャル」以外のコントラクトを達成したオフェンスは、「1ゲーム」取ったことになります。「2ゲーム」以上獲得したプレイヤーは、「ゲーム」を獲得したタイミングで、望むならプレイを終了できます。その時点で最高得点のプレイヤーが勝利となります(終了させたプレイヤーが勝てるとは限りませんから、場合によっては、「2ゲーム」獲得してもプレイを続行し、「3ゲーム」獲得してからプレイを終える、などという選択もありえます)。◇
◆
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